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【感想】手塚治虫『陽だまりの樹』-異国の地、インドでかつての動乱の時代と今が重なって見えた話

投稿日:2016年6月1日 更新日:

昨日、インドからタイ、タイから日本へと帰還を果たしました!
旅先では相変わらずいろいろあったのですが、今回はヒンドゥー教の聖地と呼ばれるヴァラナシで読んだ手塚治虫『陽だまりの樹』についての読書感想を。

インドというかタイからの帰還

いやー、ついに帰りました!日本!お風呂が最高で仕方ないとしちる@ture_tiru)です。

インドへの旅行へはデリーに住む友人宅(家ではないけど語学・IT学校)に2泊、ヴァラナシの「サンタナ」という日本人宿に2泊してきました。

時間もあまりなく、というか帰りも人生で一番長い距離かつ時間との戦いといった感じで帰れないんじゃないかと本気で焦りました(笑)

ヴァラナシ

ヴァラナシというのはガンジス河に面して発達している町で、よくインドで沐浴している映像が映し出されるところです。

この川はホントにきったなくてシャワーを浴びると緑色の液体が体から出るそうで僕は入りませんでした…

3人に1人くらいの割合で体調も崩すそうです(笑)

が、インド人はプールで遊ぶかのようにガンガンと川に飛び込んでいて、生活環境や文化の違いをまざまざと見せられた瞬間の一つでもありました。

『陽だまりの樹』のあらすじ

そんなインドのヴァラナシで読んだのが手塚治虫『陽だまりの樹』です。

幕末から黒船来航、戊辰戦争といった動乱の時代を駆け抜けた二人の主人公を中心に物語は進みます。

一人は武士の伊武谷万二郎、もう一人は蘭学者・医師の手塚良庵。

万二郎は頑固で武士の在り方を重んじ、良庵はどこまでも女好きな性格で、二人は相反しながらも動乱の中、互いの友情を深めていきます。

万二郎は剣の腕や人を惹きつける人格を買われ浮き沈みがありながらも陸軍の隊長にまで昇進し、一方の良庵も陸軍医として万二郎と共に戦地へ赴いていき、戊辰戦争が始まったところで物語は終わりを迎えました。

『陽だまりの樹』の読書感想

僕は歴史を勉強したいなと思いながらもなかなか出来なくてかなり疎いのですが、すごく面白かったです。

構成が『アドルフに告ぐ』に似ている

今のところ、手塚治虫で何をおすすめするかと聞かれたら『アドルフに告ぐ』をおすすめするのですが、この『陽だまりの樹』もそれに似た物語構成を感じました。

 

とにかく話が緻密に作られています。

そこで描かれる歴史的な流れに嫌でも誘われていく人々の人間関係、男と男の、女と女の、男女のすれ違いが開国に向けた流れの中でまざまざと見せつけられる…

登場人物も多いのですが、一人ひとりの生き様が浮かび上がるように―なんせ病気やら争いやら政治的な駆け引きで人がバッタバッタと死んでいく時代です―描かれているので、それぞれの信念の強さや偏屈さが短いながらもにじみ出ていて印象深く残ります。

万二郎の生き方と最後

特に印象深く残ったのは万二郎の最後に対して良庵が西郷隆盛に言ってのけた言葉です。

万二郎は戊辰戦争にて西郷隆盛と対立し生死不明で最後を迎えるのですが、西郷は万二郎を自身が掲げる次なる体制へ加わらないかと何度か誘い入れていました。

そこで、西郷は惜しい人を亡くしたと家へ訪れたところで万二郎のような時代の流れを読み切れない男では名を残すことはできないと言ったところで良庵が怒りをあらわにします。

「ふざけんじゃねぇー!名もなきような者たちを自分の踏み台にして残った名なんかくそくらえだ!」

こんな感じだったと思うのですが、間違ってたらすみません(笑)

とにかく、良庵は全く異なる性格をしながらも最後までおのが信じる道を貫き幕府を立て直そうと奮闘する万二郎を小ばかにした西郷隆盛を糾弾しました。

確かに、西郷隆盛は物語の中で政治的な駆け引きとして、自分の道を推し進めるために他者を犠牲にすることをいとわないような場面がありました。

そんな中、一介の武士が陸軍隊長にまで昇進してきた半生を見てきた読者としてはこの良庵が言ったセリフには胸に迫るものがありました。

幕末と今の動乱

今も「失われた20年」なんて言われちゃうように静かに、でも確かに何か時代が動いている気配とその危機感や緊張感といったものを感じさせられます。

そうした中で自分がどのような生き方を選ぶのか考えあぐねてきた異国タイでの7ヶ月間を終える間際に、さらに異国インドで読む日本の動乱とそこに生きた人間の物語は、深く心の臓がえぐられるような気持ちにもなりました。

万二郎は最後まで自分の信じる道を選んだんですよね…頑固で不器用なやつでしたが、そこは本当にあっぱれだなって…

彼は間違っていたのでしょうか?

お偉いさん方が言うようにもっと政治的な駆け引きの中で上手く立ち回り歴史に名を残すような男になる「べき」だったのでしょうか?

そもそも「べき」ってなんなのでしょう?

確かに今はいろんな問題に直面してはいるけど、そんなのいつの時代も変わらないというか問題はいつまでもあるし生まれるしキリがない。そんな中でどうすべきかなんて、結局どうしたいのか?という話にしかならない。

「ただ生きたいのか、それともしたいことをして生きるのか?」

やっぱりここなんじゃないかって気もする。

まとめ

とはいえ、インドに行っても思ったけど衛生環境やら医療環境、それに食料だってこれだけ十分に整えられてきた今の日本は大きな変革を遂げてきたのだなとは改めて感じました。

そういう基盤があるから、こうした「ただ生きるのか、それともしたいことをして生きるのか」なんて問も生まれやすいことは間違いない。

たまにそうしたある意味で強者の視点で物事を見てしまうことに少し違和感を持ってしまうのでした。

では~



語りあそびテーター

としちる

日本サッカー協会に入るため筑波大学体育専門学群を目指すも、受験前に父親が逃亡し、やむなく部活を辞める。教材費と受験費を稼ぐためにバイトしながらの宅浪生活を2年間送った後、国際総合学類に入学。タイにて日本語指導と留学も経験。帰国後、「人から始まる学問の見える化」を旗印とした『入門学術メディア Share Study』を創設。運営サイトは4つ、記事執筆数は250以上、イベント運営に携わった数は50以上(17年8月現在)。最近、VALUも動かしてます。

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