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【自己責任分析6】デヴィ夫人ブログ「大それたことをした 湯川さんと 後藤記者」の概要と内容分析

投稿日:2016年2月24日 更新日:

ISIL日本人人質事件にてインターネット上で拡散され話題となったデヴィ夫人のブログ記事「大それたことをした 湯川さんと 後藤記者」を分析していくにあたり概要と記事内容分析とコメント分析の二つに分けていきます。

まず今回はブログ記事そのものの分析です。

 

【自己責任分析5】自己責任はどのような背景の元に用いられていた言葉か?

ISIL日本人人質事件の自己責任を分析するに当たって、そもそもそれ以前にどのように「自己責任」という言葉が語られてきたのかを朝日新聞のデータを参考にした考察を行っています。

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なぜデヴィ夫人ブログなのか?

とその前になぜ今回「ISIL日本人人質事件」を分析するに当たり「デヴィ夫人」のブログを選んだのかをきちんと説明する必要があります。

そうしないと自分の意見を通すためだけに恣意的な資料選択をしたとも言えてしまうからです

こちらがその当該記事。今見てみるとはてブではだいぶ記事内のコメントとは様相が違いますね…論文を執筆していた当時は「はてブ」の存在を知らなかったので気づきませんでした。

ざっくりブログ記事を説明するとこうなります。

「日本国民並びに国際社会へ迷惑をかけた後藤氏には日本人としていっそ自決してほしい。読者の方々はこの事件に関しどのように考えるのか。」

この問いかけに対し、記事のコメント欄には 800件以上ものコメントが集まりました。

コメント欄以外にも、この記事が Facebookにて2万件以上もシェアが行われ、そのことはBBC NEWSにも取り上げられました。

まぁ、要するに「自決してほしい」発言に炎上したということですね。

ちなみにFacebookでは最終的に1万件以上の「いいね!」があった(報道当時)とBBCのニュースでは報じられていますが、シェアして非難している場合にもカウントとして「いいね!」にされてしまっているだけなので正確には違います。

ここまで騒がれたということで今回の事件における「自己責任」を考える上で一つの指標となりえるだろうということでこの記事を選びました。

単純にコメント数も多く、まとまっているというのも一つの理由です。

「大それたことをした 湯川さんと 後藤記者」の概要

デヴィ夫人ブログ「大それたことをした湯川さんと後藤記者」の記事本文は、大まかに分けると

  1. 事件概要
  2. 問題提起
  3. ヨルダンの人質
  4. 後藤さんの母について
  5. 自身が後藤さんの母であった場合にする発言
  6. まとめと問いかけ

といった6つの内容から構成されています

以下がブログ記事の該当箇所とその概要です。

事件概要

該当箇所:1行目(無法過激組織…)から 15 行目(こんなことは…)まで。

概要

難民救済に 2 億ドルの財政支援を安倍首相が表明したことを皮切りに二人の日本人が人質となった。解決を望むが二人が捕まったのが事件のそもそものきっかけだったと冷静に考えた方が良いのではないか。

問題提起

該当箇所:16 行目(日本政府は…)から 29 行目(生まれた赤ちゃんは…)ま で。

概要

日本政府は危険地域であるシリアへの渡航中止を後藤さんに呼びかけていたのにも関わらず、「自己責任」とメッセージを残しシリアに行った。確かに後藤さんのこれまでの活動は素晴らしいことだが、後藤さんを必要とする生まれたばかりの赤ちゃんを残し、湯川さんを助けに行くことにどれだけの意義があったのか

ヨルダンの人質

該当箇所:30 行目(イスラム国は…)から 44 行目(ヨルダン国王は…)まで。

概要

イスラム国は後藤さんと引き換えにヨルダンに収監されている死刑囚の交換を要求しているが、ヨルダンには有力部族の息子であるカサペス中尉が捕まってもいる。もし日本の記者を助けようとして自国の勇士が亡くなってしまえば、革命が起きてしまうかもしれず、ヨルダン国王は窮地に立たされている

後藤さんの母について

該当箇所:45 行目(たびたび後藤さんの…)から 59 行目(事件の真髄を…) まで。

概要

後藤さんのお母様がマスコミに出てきたが、自分の息子が日本やヨルダンといった関係諸国に大迷惑をかけていることを棚に上げ、息子を救ってほしいと訴えていることは腑に落ちない。まずは地に伏して迷惑をかけていることを謝るべきであり、読者もセンチメンタルに浸っているだけでなく事件の真髄を知るべきである。

自身が後藤さんの母であった場合にする発言

該当箇所:60 行目(私は…)から 73 行目(我が子を…)まで。

概要

死を覚悟し、娘を引き連れて夫であるスカルノ大統領の元に赴いた時は殺されるかもしれないことを覚悟し、また娘の命を自らの手で断つことを願った。なぜなら娘が敵の手におちることなど考えられなかったからであり、もし自身が後藤さんの母であるなら「いっそ自決してほしい」と言いたい。

まとめと問いかけ

該当箇所:74 行目(湯川さんと…)から 86 行目(皆さん…)まで。

概要

世界を巻き込んだ二人の人質交換大事件は冷静に考えれば、イスラム国が日本の国民感情を利用しアメリカ同盟国のヨルダンに揺さぶりをかけているのが実態であり、まずはそれを知るべきである。もし交換条件を果たし、ヨルダンのカサペス中尉が無事でなかったらそれは大変に罪なことである。この事件をどう思うか?

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記事の分析

後藤さんの「責任は私にあります」発言

記事で「自己責任」という言葉は後藤さんがシリア入りをする直前に撮影した動画について述べる際に「2.  問題提起」にて一度だけ言及されます。次はその一節を抜き出したものです。

日本政府は過去再三に渡って危険地域に近づくなと警告をしてきました。湯川さんは不心得にも武器を売って利益を得ようと危険極まるシリアへ足を踏み入れたのです。後藤さんは奥さんが出産するというのに湯川さんを助けに行ったのです。しかも「自分の身に何か起きてもシリアの人を責めないで、 自己責任をとる」というメッセージまで残しています。ジャーナリストの後藤さんは、これまで悲惨な戦場の模様や犠牲となった子供たちの様子を世界に知らせることに懸命に命がけの仕事をなさっていて、素晴らしいことだと思います。が、湯川さんを救うことにどれだけの意義があったでしょうか?生まれた赤ちゃんは 当然父を必要としています。

後藤さんのジャーナリストとしての活動を褒め称える一方で、湯川さんを救いに行くことにどれだけの意義があったのかという問題提起をしているのですが、後藤さんが残したビデオを見てみると「自己責任」という言葉は使われていないことが分かります

www.youtube.com

実際のメッセージはこうです。

「何が起こっても責任は私自身にあります。どうか日本のみなさんも、シリアの人たちに何も責任を負わせないでください。」

つまり、後藤さんが意図した「責任」の所在というものは「犯罪者と認識されうるシリアの人々」ではなく「危険を承知で乗り込む自分」にあるということが読み取れます

後藤さんのメッセージでは、具体的な「責任」の果たし方について述べるのではなく、あくまで「シリアの人々」を責める対象にしないでほしいという意図が表れていました。

広辞苑第六版による意味分けでは、「政治・道徳・法律などの観点から非難されるべき責(せめ)・科(とが)。」が当てはまり、特に今回の事件では、道徳的な観点から非難されるべきは危険地域に「自ら」 赴いた後藤さん自身にあることを意味すると考えるのが妥当でしょう。

デヴィ夫人の「いっそ自決してほしい」発言

また、「5.  自身が後藤さんの母であった場合にする発言」において仮にデヴィ夫人が後藤さんの母の立場であったとしたら不謹慎ではあるがと断りを入れながらも「自決」を促すという発言がされました。

1970 年に亡命先であるパリから夫であるスカルノ大統領の元へ3才の娘を連れインドネシアへ向かう際は「敵に娘が殺されるくらいならば、いっそこの手で娘の命を絶ちたかった」というデヴィ夫人の経験のもとなされた「自決」発言です。

その理由としては、敵の手におちることなど考えられなかったこと、自ら手にかけることで娘を「英雄」にすることなどが述べられています

「5.  自身が後藤さんの母であった場合にする発言」においては、「4.  後藤さんの母について」における後藤さんの母の行動は息子である後藤さんが日本国内並びに国際情勢に多大なる迷惑をかけているにも関わらず、謝辞を述べることなく安倍首相に助けを乞う姿勢を不自然であると指摘しているものと対比して自身の考えを述べたものと思われます。

「皆さんもセンチメンタルに浸っているだけでなく事件の神髄を知るべきです。」と指摘していますが、娘の命をデヴィ夫人自身が絶つことで如何にして娘が「英雄」となるのかに関して論理的な説明はなされておらず、いささか感情的な側面が強い発言だと言わざるをえません

記事を丁寧に追っていくと、このようにおかしなところが出てきます。

他にも事実誤認などあるかもしれませんが、「自己責任」とは関係が薄いので深入りはしていませんが、これだけでも十分に偏った見方がされているのが見て取れるはずです。

記事の最後には「おかしなことがいろいろあるけど、この事件を皆さんはどう思いますか?」という形で結ばれており、2016年2月22日現在で860件ものコメントが集まりました。

次回は、コメントを①記事への賛同や異論②自己責任等の使用語数③自己責任の意味分類④「自己責任」における主体と責任内容の明記の有無といったように分類分けし、それらを元に特徴的なコメントを取り上げて①「自己責任」と「無責任」②「自己責任」と「自業自得」③「責任」の所在といったように批判的な分析を行います。

では!

 

【自己責任分析7】デヴィ夫人ブログ「大それたことをした 湯川さんと 後藤記者」におけるコメントの批判的分析

デヴィ夫人ブログ「大それたことをした湯川さんと後藤記者」のコメントを分析したもの。コメントを文脈から4分類分けし、具体的な事例を取り上げて批判的に分析していきます。

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ブログ管理人

としちる

知識と知識が繋がった瞬間がたまらなく好きな凝り性。冊子制作で学んだ取材・記事執筆やデザイン制作のスキルをWeb上にて、学問的なものを発信することに役立てられればと思い活動している。

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