昔からマンガが好きでけっこーたくさん読んできたのですが、最近になってようやく手塚治虫の面白さに気づき始めました。
特にハマって一気に読んでしまったのがこの「アドルフに告ぐ」です。Kindleの日替わりセールにて100円で手塚治虫作品がたまに売られています。
この「アドルフに告ぐ」の一巻もそれで買わせてもらいました!
『アドルフに告ぐ』概要
この物語には3人のアドルフが登場します。
一人はかの悪名高い「アドルフ・ヒットラー」。
そしてドイツ人と日本人のハーフである「アドルフ・カウフマン」。
最後がユダヤ人の「アドルフ・カミル」です。
日本人ジャーナリストの峠 草平(とうげそうへい)の弟がベルリンにて何者かにより暗殺され、その事件の真相を追うべく峠は事件の真相を巡り「アドルフ」やその周辺の人物との群像劇を繰り広げます。
この作品は「アドルフ」3人が他界した段階で峠の回想として語られていく物語で、峠は狂言回しの立ち位置で描かれています。
『アドルフに告ぐ』感想
なんと言えばいいのでしょうか…読後感というものは決して気分がよくなる類のものではありません。
まさに群像劇。それぞれの人間的な弱さであったり、時代の波に抗う人々の生き様であったり、確かに絵は古臭いかもしれませんが人間模様は時を越えるといっても過言ではないでしょう…
子どもの頃はお互いに親友だと言い合う仲だった二人のアドルフが死闘を演じる結末。
時代の流れ、環境というものはここまで人を変えてしまうのでしょうか。
確かにカウフマンは青年になってもどこか幼年の頃の心を見せる場面はあるものの、最終的な彼の成れの果てというものは時代に飲み込まれた「人の弱さ」というものをこれでもかと見せつけてくれた気がします。
しかし、それはカウフマンだけでなくカミルも同じであり、直接は描かれていないものの彼が日本からイスラエルへ渡った後に一体どのような歩みをしてきたのか。
最後の結末は、そうした二人の人生の数奇な運命とでも呼べるような交錯の終着点だと思うと幼年期から青年期の描写も相まって複雑ななんとも言えない気持ちになります。
それはヒットラーも同じで、実際の史実とは違うことがほぼ確定視されているそうですが、「もし彼がユダヤ人」だったらといった仮設から導き出したこの物語は圧巻です。すごい手塚先生。
狂言回しである峠も弟の死の真相を追うべく、様々な困難に出くわしていきます。
その中で芽生えたそれぞれの恋、人間関係は当時の時代を思い起こさせてくれるようで、平成生まれの自分としては興味深く読ませてもらいました。
弟に固執して生きてきた峠が変化していく様も見ていて不思議な気持ちにさせられました。
彼が物語で動く上で貫く信念は、さすが元陸上の選手だけあってか客観的に見れば狂気的にも思えます。
そこまでするか、と。
最近はやたらと物語が長い作品が多い気がしますが、手塚作品は短いながらもその思想や哲学、群像劇、歴史、科学などをそれぞれに上手く凝縮した作品が多くあるように思えます。
この「アドルフに告ぐ」も全5巻ながら非常に読み応えのある作品だと自信を持っておすすめできます。
それにしてもKindleというか電子書籍ってかさばらず持ち歩けて便利ですねぇ。

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