CDSを学ぶ上での最初の一冊―『批判的談話研究とは何か』

基本データと目次

基本データ編著:ルート・ヴァダック、ミヒャエル・マイヤー 他 訳:野呂佳代子、神田靖子 他 出版:三元社 発行年:2018年4月10日 原著名:Methods of Critical Discourse Studies 原著発行年:2015年10月29日
目次

第1章 批判的談話研究―歴史、課題、理論、方法論 第2章 ディスコースの歴史的アプローチ(DHA) 第3章 批判的談話研究―社会認知的アプローチ 第4章 社会研究における批判的ディスコース分析の弁証法的関係アプローチ 第5章 談話と装置を分析する―フーコー派アプローチの理論と方法論 第6章 社会的実践の再コンテクスト化としてのディスコース―1つの手引き 第7章 抑制と均衡―コーパス言語学がいかにCDAに貢献できるか 第8章 視覚的・マルチモーダルなテクストの批判テク分析 第9章 批判的談話研究とソーシャルメディア―メディアの生態の変化における力、抵抗、批判

用語解説 参考文献一覧 訳者あとがき

『批判的談話研究とは何か』の概要

第一版にはなかった、「社会行為者アプローチ」「マルチモーダル」「コーパス言語学」「ソーシャルメディア」が追加され、第一章の記述もより丁寧になされているのが第三版。
心なしか、紙質も良くなった気がするし、カバー裏の真紅なレッドがCDSのイメージカラーとしてDiscourse Guidesのメインカラーと一致しているところにグッと来てしまった… Anyway. 『批判的談話研究とは何か』の帯がこちら。端的にこの書、ならびにCDSとは何かを表してくれている。
日常に溢れるメディアなどの談話的実践が、いかにして社会階級間、男女間、民族的・文化的な多数派・少数派の不均衡な権力関係等を生産し、再生産しているのか。批判的談話研究は、構成的、問題志向的、学際的なアプローチによって、そうした社会的現状を明らかにし、変革するための示唆を与えてくれる。本書はその理論的背景を解説し、「社会的実践」としての談話を批判的に研究するための入門書である。
また、本書を読むに当たって以下のヴァン・デイクの指摘はとても重要だと思うので挙げておこう。
良い方法とは、研究プロジェクトのさまざまな課題に対し、満足のいく(信頼性のある、関連性のある、等々の)答えを導き出すことができる方法のことである。それは、人それぞれの目的、専門知識、時間と目標、集めることのできる、あるいは集めるべきデータの種類などに、つまり、研究プロジェクトのコンテクストに依存するものである。(中略)ゆえに、私は批判的談話分析を行う人の理論、方法、分析、応用やその他の実践を含めて、批判的談話研究(CDS)という用語を用いることを推奨する。(筆者中略)批判的な目標を立てて批判的談話分析をしてほしい。そして、それを実現するために自分が求める独自の明確な方法によって、説明してほしい[太字は筆者による]
自分自身の寄ってたつ批判的まなざしを「正当化」するために、批判的談話研究を用いるべきではない、ということがここでは明確に示されている。 各章で言及されているように、批判的研究を進める上での「課題」を各々が挙げているように、”それぞれの”研究課題に応じた理論的、方法論的な洗練化が志向されている。 であるから、批判的談話研究を行う人にとって、あくまでも [list class="ol-circle li-mainbdr main-bc-before"]
  1. 自分自身の研究課題(リサーチ・クエスチョン)はなんなのか
  2. 研究課題に応じた方法論はどれだけ説得的なものになりうるのか
  3. 実際の分析は方法論にそぐうものであるか
  4. 分析をすることによって自分自身の批判的まなざしはどれだけ世に意味を問うことができるのか
[/list] がとても大事なのである。 そのため、CDSを自分自身の”社会的実践”として行う上で、最初の一冊として『批判的談話研究とは何か』を読み、咀嚼することを推奨したい。 それぞれの論者の研究課題や理論、方法論、分析を確認するのに最適な本だと言える。 言うまでもないかもしれないが、その上で、自分自身はどのような研究を志向するのか、コミュニケーションの中で自分と他者との往復をすることが肝要なのだ。

第1章 批判的談話研究―歴史、課題、理論、方法論

基本データ著者:ルート・ウォダック/ミヒャエル・マイヤー 訳者:野呂香代子 ▼目次 批判的談話研究とは何か?

「研究仲間」の略歴 共通基盤:談話、批判、権力、イデオロギー 談話という概念 批判の原動力 イデオロギーと権力―絶えず変化する見方

研究課題 方法論的問題:理論、方法、分析、解釈

理論的基礎と目的 批判的談話研究の主なアプローチ データ収集

まとめ

第2章 ディスコースの歴史的アプローチ(DHA)

基本データ著者:マーティン・ライジグル、ルート・ヴォダック 訳者:神田靖子 ▼目次 キー概念と用語の紹介

「批判」「イデオロギー」「権力」 「ディスコース」「テクスト」「コンテクスト」

DHA の基本的考え方と分析のためのツール 「気候変動に関するディスコース」の分析

8 つの段階を踏む DHA 気候変動についてのオンラインニュース記事に関するパイロット・スタディ

ステップ 1 :先行する理論的知識の活性化および参照 ステップ 2 :データと文脈情報の体系的収集 ステップ 3 :詳細な分析のためのデータの選定と準備 ステップ 4 :研究課題の詳細な記述と仮説の定式化 ステップ 5 :質的パイロット分析 ステップ 6 :詳細なケース・スタディ ステップ 7 :批判の定式化 ステップ 8 :詳細分析の結果の応用

まとめ

もっと知りたい人のための文献案内 課題

付録: 24本の投稿

第3章 批判的談話研究―社会認知的アプローチ

基本データ著者:テウン・ A ・ヴァン・デイク 訳者:嶋津百代 ▼目次 用語と定義 談話―認知―社会の三角形

事例: 2014 年の欧州議会選挙における人種差別主義的プロパガンダ

認知的構成要素

談話処理 知識 態度とイデオロギー 認知的構成要素の妥当性

社会的構成要素

権力と支配

談話の構成要素

談話の構造 談話のイデオロギー的構造

構成要素の統合 抵抗のディスコース:ブラジルにおける人種差別反対主義のディスコース

人種差別主義 人種差別反対主義 人種差別反対主義の理論 ブラジルにおける人種差別主義 ブラジルの人種差別反対主義の談話 人種平等法に関する討論 人種差別反対主義の談話の分析 自己提示 集団についての描写 イデオロギーの二極化:わたしたち対かれら 規範と価値観 論拠

まとめ

さらに知りたい人のための文献 課題

第4章 社会研究における批判的ディスコース分析の弁証法的関係アプローチ

基本データ著者:ノーマン・フェアクラフ 訳者:高木佐知子 ▼目次 理論と概念 適用分野 方法論

ステージ 1  記号作用的側面における社会問題に焦点を当てる。 ステージ 2  社会的不正に取り組む際の障害を明らかにする。 ステージ 3  社会的秩序がこの社会的不正を「必要としている」のかどうかを考える。 ステージ 4  障害の克服可能な方法を見いだす。

分析例:政治ディスコース分析 例証:政治テクストを分析する

ステージ 1  記号作用的側面における社会的不正に焦点を当てる ステージ 2  社会的不正に取り組む際の障害を明らかにする。 ステージ 3  社会的秩序がこの社会的不正を「必要としている」のかどうかを考える。 ステージ 4  障害の克服可能な方法を明らかにする。

まとめ

さらに知りたい人のための文献

付録 1 :情報主導型経済の構築 付録 2 : Brown and Coates (1996)からの抜粋

第5章 談話と装置を分析する―フーコー派アプローチの理論と方法論

基本データ著者:ジークフリート・イェーガー/フロレンティン・マイヤー 訳者:野呂香代子 ▼目次 はじめに 談話分析、装置分析の理論的基礎

談話という概念 談話と現実 装置 談話と権力 批判および批判的談話分析の目的

談話分析、装置分析のための方法

談話と装置の構造

特別談話( special discourses )と間談話( interdiscourse ) 談話の束( discourse strands ) 談話の限界、そして、談話の限界を広げたり、狭めたりするさまざまな技術 談話片( discourse fragments ) 談話の束の絡み合い( entanglements of discourse strands ) 集合シンボル( collective symbols ) 談話レベルとセクター( discourse planes and sectors ) 談話的出来事( discursive events )と談話のコンテクスト( discursive context ) 談話のポジション( discourse positions ) 全体的な社会的談話( overall societal discourse )とグローバルな談話( global discourse ) 談話の束の過去、現在、そして未来

談話分析の完全性について 談話分析の小さな道具箱

研究テーマを選ぶ 談話レベルとセクターを選び、その特徴を記述する 資料の入手と準備 分析

談話の束の構造分析( structual analysis )典型的な談話片の詳細分析( detailed analysis )/総合分析( synoptic analysis )

装置分析に関するいくつかの考察

非言語的に行われる実践に関する知 物質化に関する知

まとめ

さらに知りたい人のための文献 課題

第6章 社会的実践の再コンテクスト化としてのディスコース―1つの手引き

基本データ著者:テオ・ヴァン・レーヴェン 訳者:部尚志 ▼目次 序論 理論的な背景 ディスコースと社会的実践

行為( Actions ) 遂行の様式( Performance modes ) 行為者( Actors ) 呈示様式( Presentation styles ) 時間( Times ) 空間( Spaces ) 資源( Resources ) 資格( Eligibility ) 除外( Deletion ) 代用( Substitution ) 追加( Addition )

社会的行為

行為と反応( Actions and reactions ) 有形的な行為と記号論的な行為( Material and semiotic action ) 客体化と記述化( Objectivation and descriptivization ) 脱主体的行為化( De-agentialization ) 一般化と抽象化( Generalization and abstraction ) 過剰決定( Overdetermination )

まとめ さらに知りたい人のために

第7章 抑制と均衡―コーパス言語学がいかにCDAに貢献できるか

基本データ著者:ゲルリンデ・マウトナー 訳者:梅咲 敦子 ▼目次 はじめに 中心的概念と一つの実践例

コンコーダンス作成ソフトウェア コーパスデザインの問題 コーパスの種類とデータ収集 参照コーパスを使った解釈のサポート―二つ目の実践例

批判

1. 技術的隔たりと標準化の欠如 2. 組織上の壁 3. データ収集における誘惑との戦い 4. 脱コンテクスト化された(文脈と切り離された)データ 5. 言語刷新 6. 認識論的課題

まとめ

さらに知りたい人のための文献案内 課題

第8章 視覚的・マルチモーダルなテクストの批判テク分析

基本データ著者:デニス・ジャンクサリー、マルクス・ A ・ヘレラー、レナーテ・マイヤー 訳者:石部尚登 ▼目次 はじめに マルチモーダルなディスコースとは何か マルチモダリティの批判的談話分析への適用可能性

「批判的」の意味について 批判的談話分析へのマルチモダリティの貢献

先行研究と代表的研究

マルチモーダルなディスコースに潜む権力や利害関係を「明るみに出す」 周縁化された主体に発言権を与えるためにマルチモーダルなディスコースを用いる

分析手順の紹介

マルチモード分析の手法についての留意点 方法論の紹介 2 つの代表的なマルチモーダルなテクストの分析 第 1 段階 ジャンルを特定する 第 2 段階 明示的な内容を捉える 第 3 段階 潜在的な要素を再構築する 第 4 段階 構成 第 5 段階 結論と批判的評価 大規模なサンプルを用いた分析へ

まとめ

さらに知りたい人のための文献 課題

第9章 批判的談話研究とソーシャルメディア―メディアの生態の変化における力、抵抗、批判

基本データ著者:マジード・コスラヴィニック、ヨハン・ W ・ウンガー 訳者:義永 美央子 ▼目次 はじめに CDS の原則とソーシャルメディア コミュニケーションの力とソーシャルメディア ソーシャルメディアへの批判的談話アプローチの緊急適用 ケーススタディ 1 :政治的な抵抗に関するフェイスブックの「フォーカスグループ」の実施 ケーススタディ 2 :電子的に媒介された抗議活動におけるテクノロジーと多言語主義の役割 まとめ さらに知りたい人のための文献案内 課題

おわりに

CDSを用いた卒業論文を書きたいと考えている人向けに、以下のまとめ記事を作成している。 [card2 id="2047"] 研究方法や、関連する社会学やメディア論、コミュニケーション論に関する記事もまとめているので、確認してみてほしい。 (ただし、包括的な内容ではない…今後、随時、発展的に更新予定)
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