前回の記事―理論編(ポライトネス)
前回の記事では理論的な論述である第1章から第3章の紹介とその感想を書いた。 ポライトネス理論の批判点と、批判的談話研究(Critical Discourse Studies:CDS)への接続などを中心としたものだ。 [card2 id=79] こちらのリンク先からPDFはダウンロードできる↓ [sanko href="http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/handle/11094/53885" title="ポライトネスの政治、政治のポライトネス : 談話的アプローチからみた利害/関心の批判的分析" site="大阪大学リポジトリ" target="_blank"]論文の概要
今回は実際に、分析を行った第4章からまとめの第6章の紹介とその感想をば。目次4. 国会討論におけるイン/ポライトネス
4.1. 国会討論の基本的な特徴
4.2. 問題の所在
4.3. 相互行為としてのフェイス・ワーク
4.3.1. 相互行為においてフェイスを高める
4.3.2. 相互行為においてフェイスを低める
4.4. フェイス・ワークからイン/ポライトネス1へ
5. 「死のまち」発言をめぐるイン/ポライトネス
5.1. 「死のまち」発言をめぐる経緯
5.2. 分析の枠組み
5.2.1. メディア化された政治コミュニケーション
5.2.2. テクストと政治的実践
5.2.3. 社会・文化的実践
5.3. 分析の対象
5.4. 分析
5.4.1. 「死のまち」発言以前の報道
5.4.2. 福島視察後の鉢呂の記者会見(9月9日午前)
5.4.3. 「死のまち」発言の報道(9月9日夕刊)
5.4.4. 「死のまち」発言報道に対する鉢呂経産相の談話(9月9日午後)
5.4.5. 「放射能」発言の報道
5.4.6. 辞任会見における鉢呂経産相の談話(9月10日)
5.4.7. 辞任会見の報道(9月11日朝刊)
5.4.8. 鉢呂と報道に対するオーディエンスの評価
5.5. まとめ
6. おわりに
第4章では国会討論における基本的な特徴(実践の共同体)を実例とともに説明しながら、国会討論において如何にそれぞれの顔の立て合い(フェイス・ワーク)が行われ、それぞれの評価や判断・解釈がなされているのかを分析されていた。ここでは、第2章で言及されてポライトネスだけでなく、インポライトネスをも分析の対象にすることで、伝統的なポライトネス研究の超克が試みられているようだ。
第5章では、Norman Faircloughの用いる談話分析アプローチを援用しながら、「死のまち」発言から辞任に追い込まれていった鉢呂元経産相大臣がどのような発言をし、それをジャーナリストがどのように受け止め、報道し(再コンテクスト化)、オーディエンスである市民がどのような反応を示したのか(コミュニケーション出来事の連鎖)ということを時系列的に実際の発言を取り上げながら分析されていた。
最後の第6章では、論文のまとめと今後の課題(善悪の判断の難しさ)を述べ締められていた。