博士論文の最終原稿を提出した

 2024年4月23日、博士論文を提出した。タイトルは「自己責任ディスコースの言語人類学的研究─中東地域日本人人質事件を題材に─」、章構成は序章と終章を入れて8章構成、およそ200頁で文字数はだいたい21万字ほどとなった。

 あまりに仕事で忙しく、また途中で思うようにデータを得られず(特に映像)、書籍化に向けた下書きだと割り切って書き始めた。ただ思うように執筆は進まず、ここにいたるまでさまざまな苦難があった。だがあともう少しで一区切りがつく。以前、ブリュッセル紀行で観光とテロについて書いたように、今後はより視野を広げた文章を書くつもりだ。

 最近、あらためて関心を持って調べ始めたのが「個人主義」についてである。ぼくの博論では、日本社会の自己責任論がどうなされてきたか、言語・コミュニケーション(≒ディスコース)の観点から分析してきた。ただ、それだけだと論争の分析ばかりになってしまう。

 一方で、個人主義の問題は自己責任よりもおそらく射程が広い。西洋文化圏ではキリスト教の影響や世俗化の過程、農業から工業への経済構造的な転換も歴史的には関わってくる。あるいは、哲学という営みは、普遍を語りながらもそれを語る「個人」の固有名の問題とも言える。実は、これらとは違った角度から論じているものの、博論でも着目したのはこの「個人」と拭い去れない「社会(あるいは、伝統)」の交叉であった。

 現代は誰しもがスマホを介してインターネットに通じ、情報を発受信する。ここにも個人化、あるいは自己責任は関わってくる。この情報社会論的な観点は、博論の構成上、どうしても希薄なままとなってしまった。おそらく、それに光を当てるのが個人主義の問題だと考えている。とまぁ、芋づる式に論点は出てくるものの今日はこの辺で。ここでも少しずつなにか書きたいと思う。

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