研究者らが予算の10%でもクリエイティブに投資してくれたら世界はもっとよくなる。
どうも。青山俊之です。冒頭のことばは実はぼくのことばではありません。ロフトワークのMTRL事業部の責任者を務める弁慶さんが語ったものです。
先日、弁慶さんとお話しする機会がありました。「研究者がロフトワークを頼ってくれれば、社会とのコミュニケーションやコミュニティ形成がもっとクリエイティブで良いものになるはずだ」。そんな文脈で出てきたのが、このことばでした。
確かに、Webやメディアづくり、イベント、コミュニティ支援・・・なにが起こるか未知数の中でも、ロフトワークのクリエイティブは「いい仕事」を残すことが多いと思います。
その最たる事例と言えるのが、日本の最先端研究が集う、大阪・関西万博展示「ムーンショットパーク」の総合企画運営プロデュースの仕事でした。今回、ロフトワークのマーケター・編集者という「裏方」の視点と、研究者という「当事者」の視点、そして「いち観客」としての視点を持つぼくが、この場所の取材記事を執筆しました。
日本の最先端研究が集まる大阪・関西万博展示「ムーンショットパーク」の体験レポートです。ロフトワークが支援をした「豪雨制御プロジェクト」の展示を通じ、いかにして研究者の想いを「カタチ」にしたのかを紐解きました。最先端研究だけでなく、その背後にある災害への「祈り」や「喪」の側面にも触れ、1970年万博の「成長」と対比しながら、現代における「成熟」した未来社会のあり方も考察しています。科学技術と人文知が交叉する、未来への思索の記録です。
取材準備をする中、ぼくの念頭にあったのは「成長」を象徴した1970年の大阪万博から半世紀、 2025年の万博ではどう「成熟」が象徴されるのかという問いでした。斜め下からまっすぐ、万博のコンセプトやムーンショットパークの展示を眺めてみる。すると、ただ上を向く「成長」ではなく、多様なノイズを含み込んだ「成熟」の姿が見える──取材を通して、そんな手応えを感じました。
今回、特に焦点を当てたのが「豪雨制御プロジェクト」です。 そこには「防災」という明確な目的の裏に、自然への畏敬や、災害で失われたものへの鎮魂という、研究者たちが抱える感情の裏面が横たわっていました。
そうした「割り切れなさ(ノイズ)」を排除せず、複雑なまま社会に提示すること。それこそが、これからのサイエンスコミュニケーションや、クリエイティブが担うべき「責任」の一端ではないかと考えています。
記事では、ロフトワーカーが研究者の想いを「Weather Interpreter(天気の翻訳者)」というコンセプトに落とし込み、、展示・小説・アニメーションといったクリエイティブな「カタチ」に昇華させたプロセスを追っています。「研究者」と「社会で生きる多様な人々」の間に立ち、意味を編み直す仕事に関心のある方、特に同世代の研究者や学生の皆さんに届くことを願っています。


11月24日(月・祝)の19時から行うぼくの初LIVE配信「雑談、論壇、直談判! 戦後80年、日本の自己責任論を考える」では、今回の「ムーンショットパーク取材記事」や、博士論文のテーマである「自己責任」、そしてその書籍化タイトルに掲げる「聴す責任(実は今回の取材記事はその実践でもあります)」について、みなさんとお話しする予定です。 国家イベントである万博の話題なども交えつつ、「参加してよかった!」と思える時間にきっとします。ぜひお立ち寄りください!




