
現在ゴールデンウィーク真っ只中ですが、2週間後に迫った勉強会・交流会イベント「夜ふかし大学 第一夜」の準備に向けて、絶賛奔走しています。夜ふかし大学を一言で言えば、大学の未来について肩書きを脇に置き、あーでもないこーでもないと語り合う場です。1年前後ほど継続的に実施する予定で、組織・広報・教育・地域連携・社会貢献など、各回でテーマを変える一方で、「2035年の壁」と呼ばれる大学進学者急減への対応を共通課題に据えています。
現在、予想を上回るペースでお申し込みをいただいており、大学の未来に対して「なにか言いたい」「なんとかしなければ」とウズウズしている方々が着実に集まってきている手応えを感じています(5/2現在、東京会場はほぼ満員の30名弱ほど)。
今回は、イベントページだけでは語り尽くせなかった、この「夜ふかし大学」という場に込めたぼく個人の「企み」について、少し書き残しておきたいと思います。
単なる「ゆるい交流会」ではない、自治と緊張感の場
「夜ふかし大学」という名前や、「肩書きや建前を脇に置き、ゆるく本音で語り合う」というコンセプトを見ると、もしかするとよくある同業者の愚痴こぼしや、名刺交換メインのゆるいネットワーキングを想像するかもしれません。
けど、ぼくが仕掛けたいのは、ただ集まるだけの場ではありません。参加してくださるみなさんに求めているのは、肩書きを外したゆるさと同時に、大学の未来、学問、そして自らの実践に対する緊張感です。
できる限り、次なる思考や行動への気づき・兆し・問いを確実に持ち帰ってもらえたらなーと思っています。おいおい、全然ゆるくねぇーじゃねーか。そんな声が聞こえてきそうです。よくわかります笑
もちろん、大学なり社会なりに対しモヤモヤしていたり、大学や教育についてあらためて考えたいんだよな、そのヒントが得られればといったゆるいモチベーションでもまったく問題ありません。けど、その上でなお、「あっ、こういう発想や実践があるんだ」とか、参加してもらったからには「意味があった(あるいは生まれてしまった!)」という実感を持ち帰れる場にしたいなと思っているんです。
そうした、ものの見方がちょっと変わるかも、といった兆しが生まれる場にするためには、やはり適度な緊張感がある場を作り出したいんです。
大学の未来を考えるって言っても、本当に幅広く、たとえばこうした場を設けてそう簡単に大学をめぐる課題が解決するなんてつゆ程もぼくは思っていません。けれど、大学全入時代と言われてきた今、「大学」をハブにすることでそれぞれの人生や教育経験、あるいは学問的な接点が紡がれるインターフェースとしての可能性がたぶんにあるのではないかとぼくは考えているんです。
ぼくはその可能性をもっと押し広げたい、すべきだとさえ思っています。なぜかを語り出すと長くなってしまいますが、大学の存在意義であり、主要な機能は今も昔も「自治」だと考えていることが根っこにあります。
だからこそ、大学を介したゆるやかなつながりによって、新しい自治的な場、モデル(範)を示していくこと。参加者を単にお客さん扱いするのではなく、共に熱量と質を高め合う共犯者としての「緊張感」を、この夜ふかし大学の根底には流しておきたいのです。
「18歳中心主義」からの脱却と、はみ出す価値更新
なぜ、今そんな場が必要なのか。「2035年の壁」ということばに象徴されるように、大学を取り巻く環境は待ったなしの状況です。
これまで多くの大学が、いかに生き残るかという「生存戦略」や、他機関とどう繋がるかという「連携戦略」を描いてきました。それは今後も発展・展開されていくでしょう。夜ふかし大学でもその最新事例を共有するつもりです。しかし、もはや既存の枠組みのなかでパイを奪い合うだけでは、根本的な解決にはなりません。
きっとぼくたちが向かうことができるのは、時に大学の行末を見守りながらも、研究者をはじめ、既存の価値観・慣習から「はみ出す」価値更新を担う人々の取り組みに親しむ(時に学び、時に批判し、時に共に語る)、共謀的観客の輪を広げていくことです。だからこそ、大学関係者はもちろんのこと、より外部のゆるく関心を持つ方を半ば意図的に巻き込むことを狙って企画を練り上げました。
基本的に、18歳のパイを奪い合っても限界があるのだから、社会人、企業、地域社会など、多様な世代や価値観が混ざり合い、新しいものを生み出していくための「探究と連携の回路」を創り出す方向に大学は向かわざるを得ないのではないかと思うんです。
日本の「知のインフラ」を再設計・再編集する
現状に危機感を持ち、現場で悩み、それでも「動きたくなる組織」を作ろうともがいている人たちが集い、知恵を共有し、どんな個人であれ組織であれ、いつの間にか陥ってしまう「危機」と向き合う回路を作ることには、長い目で見て大きな意義があるはずです。
付け加えて言えば、もっとずっと先のビジョンではありますが、夜ふかし大学の真の目的は、孤軍奮闘する変革者たちを繋ぎ、日本の「知のインフラ」そのものを再設計し、再編集していくためのムーブメントを起こすことです。なので、一見するとただの勉強会ですが、ぼくとしては壮大な実験に進むための準備運動が夜ふかし大学です。
いよいよ2週間後に迫った第一夜。まずは第一夜のイベントページを覗いてみてください。各回ごとにいろんな仕掛けを施していきます。もし気になるテーマがあればぜひ来てください。ではでは。
ちなみに、「自治」にこだわるのはちゃんとした理由があります。自分が2015年の頃、研究テーマで選んだのが「文系学部廃止論争」と「日本の自己責任論」でした。後者の自己責任論を中心に博士論文まで書き上げたのですが、前者の大学論は実践もしてきたのですがややもすれば踏み込みきれずに長らく活動が途絶えてしまっていました。けれど、この2つのテーマは異なるようで、根っこでは近しい問題意識に貫かれているもので、それが「自治」なんです。
この自治を新たな軸に据えようと思ったきっかけについて、以前書いた雑記を最後に少しだけ紹介させてください。3年前にベルギーのブリュッセルを歩き回ったときの記録です。かつて「テロの温床」と呼ばれた地区と、地道な交流から「自治」を取り戻した街を対比しながら、社会の複雑さに立ち向かうための実践と理論についてゆるっと書いた雑記です。……と書くとお堅いですが、現地で食べた1杯2,500円(!)の豚骨ラーメンの味を噛み締めながら書いた軽いエッセイなので、気が向いたら覗いてみてください。

