“Fractal meanings and cultural logics”と題した口頭発表をしました(IPrA in ブリュッセル)

 こんにちは。青山俊之です。2023年7月に開かれた国際語用論学会(The 18th International Pragmatics Conference、通称IPrA; イープラ)にて口頭発表をしてきました。タイトルは、”Fractal meanings and cultural logics: Metapragmatics of “jiko-sekinin (self-responsibility)” in Japan"、日本語で訳すと「フラクタルな意味と文化論理:日本社会における自己責任のメタ語用論分析」といった感じです。下記のツイートの通り、過去の自分の研究をアップデートする内容を話しました。

 ざっくりいうと、2015年のイスラム国日本人人質事件にて、人質とその家族に対する自己責任論の理由づけに用いられた迷惑に着目し、バッシングをする人々による自己責任と迷惑が意味する二重の命令を分析しました。

 ここでいう二重は主観的な命令と客観的な命令です。たとえば、「迷惑をかけるな」は主観的には「(わたしを)不快にするな」、客観的には「規則を守れ」という二重の命令がひとつの「迷惑」から発せられます(東 2022[2017])。これが人質となった被害者側にも「自己責任だ/である」という非難が寄せられた際に、こちらも二重化した命令を発します。そうすることで、自己責任とその理由づけに用いられる迷惑の二重−二重の命令が混ざってしまい、主張や議論が錯綜します。

迷惑と自己責任のメタ語用論分析

 この状況を専門用語で示したのが、タイトルに付けた「フラクタルな意味」と「文化論理」です。フラクタルとは、三角形の中に逆さの三角形を入れると四つの三角形ができるように、同じもののなかに複数の似たものが存在している状態を言います(Gal & Irvine 2019)。ですから、自己責任も迷惑も意味する二重の命令をフラクタルな意味と呼びました。

「自己責任」は抽象的な名詞であり、概念でもあるため、よくその意味が問われてきました。自己責任は当事者・被害者からも語られるため、自体はもう少し複雑ですが割愛。ひとまず、自己責任と迷惑を用いた二重の命令を分析したように、ぼくが行ったのはコミュニケーション(語用とも呼ばれます)の分析です。ですから、語用論の学会、その国際的な総本山であるIPrAで発表を行いました。

 今回、ぼくにとって初めてのヨーロッパ、初めての国際学会でした。もちろん、気合いを入れてブリュッセル市内をがっつり観光。5日ほど滞在し、発表日以外に動ける内2日は市内を巡りに巡って両日とも2万歩を達成。つまり、学会は発表以外はガン無視しました。

 いろんな出会いや発見もありましたし、なにより7年ぶりの海外で久方ぶりに異国情緒を味わうことができて満足です。発表もそれなりにうまくできたし、研究者の方々との交流も今後に繋がりそうないい経験となりました。今回の発表内容は博論にも盛り込む予定で、執筆はこれから。引き続きがんばります!

参考文献

東浩紀(2022[2017])「初詣ベビーカー論争に見る「迷惑」と「権利」の混同」、『AERA』2017年1月23日号、朝日新聞出版、東浩紀(2022)『忘却に抗う』朝日新聞出版

Gal, Susan & Irvine, Judith T. (2019) Signs of Difference: Language and Ideology in Social Life, Cambridge University Press.