『「ことば」ってそもそもなに?―いろいろな「ことば」の姿や意味』に続き「ことばを知ることのメリット」なんてとても曖昧な表現だ。 だけど、敢えて「ことばを知る」―「ことばを学ぶ」とも言いかえられるが―ことによってどんな良いことがあるのか考えてみるのがこの記事の目的なわけである。 考えてみる前に「ことば」が人類になにをもたらしてきたのか少し触れておこう!
ことばの恩恵
まず、大前提として「ことば」がなければここまで人類は進歩することはできなかった。 「ことば」があったからこそ人間はコミュニケーションを上手にとって、身を守る術や道具を生み出したり協力したりして生き抜いてこれたはずだ。 たとえ科学技術であろうと歴史的に積み重ねられた学びという蓄積があってこそ成り立つものだ。 そして、その学びを成り立たせているのは「ことば」なわけである。 そう考えてみると、僕らの生活を根底で支えているものは「ことば」とも言えるかもしれない。人間に根付いたものとして日常に「ことば」は溢れている。
ことばを知ることのメリット
僕らの最大の武器である「ことば」を学ぶことにはさまざまなメリットがある。 最初にまとめてしまおう!
- 世界が広がる
- 慎重になる
- 文化・社会を学ぶ
- コミュニケーションに役に立つ
世界が広がる
ことばを知るということはそれだけ多くの「世界」を知るということだ! 一人では知ることのできなかったものが「ことば」を通して垣間見える。文章を読むこと、本を書くこと、経験を語ること。これらは「ことば」あってこそできることで、ことばを知ることによってより多くの世界を知り、また表現することができる。
例えば、「きく」という行為は「聞く」と「聴く」で表すことができるわけだけど、この2つの違いを「知る」ことによって2つの「きく」を言語化することができる。もしこの違いを知らなかったらただ「聞いている」だけになってしまったかもしれない。本当はよく「聴く」必要があった話だったかもしれないのに。もうちょっと難しい表現をすれば、ことばを知ることによって、今回の例で言えば語彙力をつけることによって新しい考え方や概念を持つことができるわけだ。「世界が広がる」はこれ以降に紹介することの前提のようなものなので、よく心に留めてほしい。
慎重になる
「世界が広がる」ことによって、物事の違いが分かるようになる。つまり、「ことば」を知ることによって「分ける」ことができるのだ。言われてみれば当たり前のようなことなのだけど、この「分ける」ということがとても重要なので別の機会にもう一度ちゃんと説明したいと思う。とにもかくにも、違いを知ることによってなにが正しいとか、なにが間違っているかということが垣間見えてくる。
「ことば」を知る、言い換えれば知識がつくことによって世界が広がる一方で、簡単には物事の善し悪しを判断できないことが分かってきてしまう。例えば、さっきの「聞く」と「聴く」を知っていれば自分はどっちの「きく」をしているのだろうと考えることができる。いろんな世界を知れば知るだけ、つまり選択肢が広がるだけ慎重になれる。 実は大人になるってこういうことなのか…?なんて思わなくもない。
文化・社会を学ぶ
「ことば」を知る・学ぶというときに同時に言えるのは、文化や社会を学んでもいるということだ! 案外、これは意識されていないんじゃないかと感じている。分かりやすい例で言えば、外国語学習。 外国語を学ぶというと文法や単語を覚えて使うということが意識されがちだと思うけど、実際のところはその文法や単語を成り立たせてきた歴史的な背景も学んでいる意識を持つことがとても大事だ。つまり、ただ単にその言語を使いこなせるようになるということではなくて、その言語が持つ社会的・文化的背景も同時に学んでいる。
「ことば」と”language”は一対一で対応した意味があるわけじゃない。 語源であるとか実際の使われ方をよく見ていると、そこには日本語と英語の背景となっている社会や文化が関係している。例えば、失敗をしたときに”Oh my God!”と英語で使うと知っている人は多いと思うけど、これは英語が用いられてきた文化圏にキリスト教が関係していることが明らかに見て取れる。これは外国語学習だけでなく、方言だとかそれぞれの話し方や書き方のスタイルの違いにも言えることだ。明確に分かることもあれば、ささいなもので意識してみないと分からないことも多い。ぜひ、ことばを知ることは文化や社会も同時に学んでいるということをちょっとだけ意識してみてほしい。 きっと思わぬ発見があったりするだろう。
コミュニケーションに役に立つ
これまで挙げてきたことを総じて言うと、「ことば」を知ることによってコミュニケーションに役立たせることができると言えそうだ。いろんな世界があることを想像できなければ、慎重になったり相手の話を聴いたりすることができずに会話や議論はうまく成り立たないかもしれない。自分とは違う背景を持っている相手のことを知らなければ、思わぬところで誤解を生んでしまうということもしばしばあることだ。すべてがすべて「ことば」を知れば解決する話でもないが、少なくとも上手なコミュニケーションという意味での対話をするためにはやはり「ことば」を知ることは欠かせそうにない。
まとめ
最後にもう一度、「ことば」を知ることのメリットをまとめておこう。
- 世界が広がる
- 慎重になる
- 文化・社会を学ぶ
- コミュニケーションに役に立つ
「ことば」のおかげで学びを深め、進歩し、対話することができる。 ぜひ、ちょっと意識してみてほしい。
- 「ことば」ってそもそもなに?―いろいろな「ことば」の姿や意味
- ことばを知ることのメリット―学びを深め、進歩し、対話へと至るために
- そもそも「言語学」とはなにか―ことばを深めるための多様なまなざし
- 言語学を深めるデメリット―4つのストレスから学ぶ言語学の特徴